『雪』~初恋~

5/11
前へ
/11ページ
次へ
――空は、曇っていて薄暗い。 私は、ショッピングモールに着き、入口のすぐ横にあるベンチに腰掛けた。 ポケットから煙草の箱を出し、そこから一本を取り出してくわえ、ライターで火をつける。 煙草を燻らせながら、あらかじめ買っておいた缶コーヒーに口をつけた。 (アイツ…はやく来ねぇかな…) ボーッと、目の前の景色を眺めてみる。 と。 そこに、私のよく知る人物の姿を見つけてしまった。 その人物は、煙草を手にこちらに近づいてくる。 (どうしよう……!) 私は、心だけが焦り、身体は固まってしまった。 視線も逸らせない。 そんなんじゃ、相手にも気付かれるのは当然だった。 「……紗織?」 「雪生兄ちゃん……」 私の……初恋のヒト。 …そして、従兄弟だ。
/11ページ

最初のコメントを投稿しよう!

2人が本棚に入れています
本棚に追加