栞のラブレター

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私には、好きな人がいます その人は本が好きです 図書委員の私も当然本が好きです その人はオシャレには無頓着です 髪の毛はセットされてはいません きっと朝起きてそのままです 髪の毛は長くも短くもありません そんな彼は毎日、放課後に図書館に現れます 毎日同じ席に座り 毎日同じ時間に帰っていきます 家族の仕事の都合でしょうか それとも他に理由があるのでしょうか 私は彼と一度だけ話したことがあります カウンターの前に立った彼は 「栞…ありませんか…」 そう言いました 初め、私の名前が呼ばれたのかと混乱しましたが 違うと瞬時に分かりました 私は彼の顔を見つめたまま、その時たまたま図書委員の仕事で作っていた栞が完成したので、そのままその完成したばかりの栞を彼に渡しました 彼は何も言わず、その場を立ち去っていきました 私は彼を呼び止めて、思いを伝えようと口をパクパクさせましたが、私の声が発せられることはありませんでした 虚しさと悔しさが心を覆い、悲しくその場に座りました 放課後はいつも二人きり でも 私はもういない     栞のラブレター
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