栞のラブレター

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次の日 今日は雨が降っています この頃になると、私のことを引きずってくれる人間は二人だけでした 恵と彼 早く私のことなんか乗り越えてほしい そう思いたいけど 人に忘れられるのは怖いことです 放課後、彼は図書館の席に座り、あの本を取り出しました そして 栞に気づきました 彼は一瞬、ビックリしたように辺りを見回しました しかし、すぐにそれも止み、彼は栞をまじまじと見つめ、やがて涙しました それは悲しくて涙したんじゃない 私はそう気づきました 彼は嬉しかったのです 誰かの悪戯かも分からないのに 彼は泣いていました 私は彼の唇にそっと、私の唇を合わせました 頬を伝う涙が、二人の唇に吸い込まれていきます 彼はその瞬間にハッとなり 「栞…さん?」 と呟きました 私の体は消えていく 私の魂が消えていく もう悔いは無い 私が完全に消えた時、彼は窓の外を見つめて ニコッと笑いました 今日は 雨が降っています 完
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