第一話:黒猫の居る屋上

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帰りのホームルームが終わって、さぁ帰ろうとした時。 「吉川、お前今日日直だろ。プリント運んでくれ。」 …出鼻くじかれました。 今日見たいドラマあるのに!! 刑事物で主人公の女刑事がクールで美人で格好いい、ちょっと古いドラマだけど。 親…帰ってないもんな。 家誰もいないし…、見逃したら後でYouTubeに上がっている事を願うしかない。 † 思った以上にプリントが多くて、だいぶ時間がかかった。 これはドラマ諦めるか…YouTube上がってろよ…!! 教室に入ると、日が沈みかけていて、空は紫と赤のコントラストを描いている。 窓際に誰かの人影があった。 「…お疲れ様、吉川さん。」 「…相澤君?まだ残ってたんだ…。」 「うん、吉川さんを待ってたんだ。」 だったら手伝えよとか思ってなんか…。 …あれ? 相澤君って三組だったよね? でも私は今自分の一組の教室に入って来た訳で、要するに何が言いたいかって言うと、「なんでこいつは此処に?」って事だ。 「俺、吉川さんに言いたい事があってさ。」 「…何?」 しばらくの沈黙があった。 正直話があるなら早くして欲しかった。 今の私には、わざわざご足労頂いた学校のアイドルより、テレビの中の心の姉御が見れるか否かの方が重要だった。 しかし、彼の話は私の予想もしなかった方向へ飛んでいった。 「俺っ、一年の頃から吉川さんが好きなんだ。…俺と付き合って下さい…!!!!」
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