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「メイか?」
「分かるの?」
「かろうじて、な」
「そっか」
メシア様はそれだけ言うと部屋へと戻っていく。
また部屋の前で待つのは嫌なので、少し強引だと思ったが彼女が障子を閉める前にそれを手で止めた。
すると彼女はやはり不機嫌そうな顔をした。
それは、まだ何かあるのかとでも言いたそうな顔だった。
彼女の関心は完全に粘土にいっている。
オレという存在は粘土に負けるのかと、それが悔しくて無理矢理部屋の中に入った。
必要なもの以外何もない、シンプルで少し寂しい部屋。
今度ぬいぐるみの一つでも買ってやろう。
きっとまだ作っている店はあるだろう。
「出ていって」
「嫌だ」
「何故」
「何故って――その、側に居ちゃ駄目か?」
「は?」
駄目もとだった。
嫌がるに決まっていると思っていた。
だがメシア様の驚いた顔を見て、もうひと押しだと思った。
「オレ、こういうの得意なんだぜ?」
彼女の視界に入りたくて、心に残りたくて。
本当は機械しか弄った事はないのに、オレはそんな事を言っていた。
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