忠と私

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翌日、メイのもとに駆けていくメシア様。 あの後も納得がいかず、結局徹夜して作ったプレゼント。 メイはそれを受け取って、ゴミ箱へ捨てた。 メシア様の驚いたような、その後の悲しそうな顔が頭から離れない。 「だから注意したのに。何も感じないって。」 オレと一緒にそれを見守っていた光も、自分のことのように悲しそうに言う。 オレは我慢できず、メイが去ってもその場から動かない彼女のもとへ駆け寄った。 今にも泣き出しそうな顔で見られて、胸が痛くなる。 「次はオレにくれよ」 「――嫌だ」 ついに零れ落ちた涙。 それを拭ってやりながら、オレはメイの廃棄を考えていた。 会えばまた辛くなるんじゃないかと思ったのだ。 それを正直にメシア様に伝えれば嫌だと横に振られる頭。 簡単に生きる権利を奪ってはいけないのだと、彼女は言う。 そんな彼女が愛しくて、そっと、だが強く彼女を抱きしめた。 「放せ」 彼女はオレの胸を押す。 「嫌だ」オレは彼女からの命令をすぐさま拒否した。 我儘だと思われてもいい。 だが、放ってはおけない。 やはりアンドロイドへのプレゼントを作るのなんか止めるべきだったんだ。 オレの愛しい人。 彼女がこうして悲しむ姿なんて見たくはなかった。 「今度は一緒に作ろうな」 「作る気になったらね」 「ああ、それでいい」 抵抗するのを諦めたメシア様は静かにオレの胸に収まった。 時折肩を震わせて、また泣いているようだった。
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