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「おい、起きたか?――ってお前何やってんだ?」
その言葉に障子のある方にごろりと方向転換すると、気に食わなそうに眉を寄せる忠が居た。
「添い寝」
「どけ。ていうか起こせよ。風呂に入らせる」
「はいはい。湯船汚れで真黒にしてないだろうね?」
「してねぇよ」
僕はメシア様を優しくゆすった。
だが彼女は中々起きてくれない。
だからかな、少し悪戯心が湧いた。
彼女の耳元にそっとキスを贈り「早く起きないと、いくら僕でも、どうするか分からないよ?」と囁く。
「何言ってんだ、アホ!」
すると鬼のような形相の忠に彼女の側から引っぺがされた。
彼はその後メシア様をばしばしと叩き、無理矢理起こして怒られることとなった。
その後風呂に入り、メイに長い髪を乾かしてもらった彼女は僕達と遅めの夕食をとる。
眠そうに何度も目を擦る姿が可愛い。
やっぱりこうしていると妹が出来たみたいで嬉しい。
男ばっかじゃ花がないよね。宏はいいとして、忠は暑苦しいし。
そう思って彼女を見つめていると、不意に目が合う。
僕は得意の笑顔で笑ってみせたが、彼女の表情は変わらず、食事を再開していた。
寂しくなる。
寂しくて、寂しくて、仕方がなくなる。
お願いだからこっちを向いて?
そう思って彼女の隣に座り込み、無意味に、無遠慮に頭を撫でてみた。
だが彼女はされるがままになっていて、こっちを向いてくれない。
少しむっとした僕は彼女の柔らかそうな頬にそっと口付けた。
そこでようやく再び彼女と目があった。
やった、と喜んだ瞬間、僕の頬には痛みがはしっていた。
少しして、叩かれたのだと気付く。
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