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「二度と僕に触るな」
「ごめ――」
「あなたは誰にでもこういうことをしてきたんだろうね?」
「それは――そうだね」
「最低だ」
いつにも増して冷ややかな目が僕を見つめている。
違う。
こんな筈じゃなかった。
ただ僕のことを見てほしかっただけで――。
嫌われたくない。
そう思った僕は逃げるようにその場を立ち去ろうとした彼女の手を咄嗟に掴んだ。
「今度からは君にだけにするよ。約束する」
「別にされたくない」
「じゃあ、どうすれば許してくれる?」
「許さない」
完全に拒絶され、胸が痛くなる。
嫌だよ。
こっちを向いて?
メシア様――。
だが僕の願いは叶うことなく、手を振り払われ、彼女は自室へ戻って行った。
「馬鹿だな」
「ああ、馬鹿が居る」
同席していた二人からそんな言葉を貰い、余計に苦しくなった。
すぐに追いかければよかったのだけれど、僕の足は床にくっついたように動かなかった。
また拒絶されたらどうしよう。
そんな事が頭の中をぐるぐると回り、思考が出来なくなる。
「光?」
そんな僕の異常に気付いた宏が駆け寄ってくるのが見えた。
そして気付けば僕は床に倒れていた。
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