光と共に現れた

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メシア 人々を救済する人。 それが私。 核戦争の三千年後に生まれた私の周りにはアンドロイドばかりだった。 愛玩動物もとうに消え、呼吸するのは老人ばかり。 その中に光と共に現れた子供(外見年齢十六歳)の私。 人々は私をメシア様と呼ぶ。 私はどこから来たのか分からないのに、自分が誰だか分かってないのに、それを受け入れた。 全ては今、その場を生きるため――だと思う。 私は本能的に行きぬく術を知っていたのだ。 そんな私には三人の大人の婚約者が居て、早く彼等と仲良くなるようにと同じ屋敷に住んでいる。 一人は光(ヒカル)。 もう一人は宏(ヒロシ)。 最後に忠(タダシ)。 生き残っている人間の内の、唯一の二十代の大人だ。 三人は三つ子で、光は穏やか、宏は静か、忠はヤンキー顔(でもいい人)。 そう、私は彼等の子供を産むためにここに存在している。 周りが当たり前のようにそれを望み、メシア様などと呼ぶのだ。 「メシア様。どうか元気な子を沢山お産みください」 だがそうはいかない。 私にその気は全くないのだ。 いくら光が穏やかな笑みを浮かべる天使のような人だとしても。 宏が煩いのを何よりも嫌うが、花が好きな優しい人だとしても。 忠がお菓子をくれる人でも。 この三人と身体をかさねる事は、とても想像できないし、気持ち悪い。 だから私は極力彼らにも周囲にも期待を持たせないように、関わらないようにしている。 婚礼の儀は一年後。 その日の夜に、子作りをしないといけないらしい。 その時になったらどこかに逃げ出してやる。 そう思っている。
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