宏と私

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ある日のことだった。 メシア様とばったり書室で顔を合わせた。 彼女は相変わらず無愛想な顔をしていて、すぐに書物に視線を戻した。 婚約者の兄弟三人。 その中でおそらく最も嫌われているのがオレだろう。 もし嫌われていなかったとしても、いい風には思われていないだろう。 何故なら春に現れた彼女と一緒に過ごして一ヶ月半の間、他二人と比べて数えられるほどしか会話をしていないのだから。 オレは書室に来たことを後悔した。 何故なら読みたい本があったのではなく、読みたくなるような本を探しに来た。 つまり暇つぶしに来たのだ。 だから別にこの場を去ってもよいのだが、流石にすぐは感じ悪いか? そう思った俺はとりあえず何かしらの本を探すことにした。 「……」 「……」 沈黙が重い、ような。 彼女はどんな本を読んでいるのだろうか。 チラリとメシア様の様子を窺ってからふと我に返る。 オレが気にすることではないか。 そう思って検索機に文字を入力していく。 だが最近の本は一応買うものの、執筆者が老人だというのがほとんどで、今までの人生談などなので(将来の自分のためになるが)正直飽きる。 ――彼女なら何か面白い本を知っているだろうか?
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