29人が本棚に入れています
本棚に追加
ある日のことだった。
メシア様とばったり書室で顔を合わせた。
彼女は相変わらず無愛想な顔をしていて、すぐに書物に視線を戻した。
婚約者の兄弟三人。
その中でおそらく最も嫌われているのがオレだろう。
もし嫌われていなかったとしても、いい風には思われていないだろう。
何故なら春に現れた彼女と一緒に過ごして一ヶ月半の間、他二人と比べて数えられるほどしか会話をしていないのだから。
オレは書室に来たことを後悔した。
何故なら読みたい本があったのではなく、読みたくなるような本を探しに来た。
つまり暇つぶしに来たのだ。
だから別にこの場を去ってもよいのだが、流石にすぐは感じ悪いか?
そう思った俺はとりあえず何かしらの本を探すことにした。
「……」
「……」
沈黙が重い、ような。
彼女はどんな本を読んでいるのだろうか。
チラリとメシア様の様子を窺ってからふと我に返る。
オレが気にすることではないか。
そう思って検索機に文字を入力していく。
だが最近の本は一応買うものの、執筆者が老人だというのがほとんどで、今までの人生談などなので(将来の自分のためになるが)正直飽きる。
――彼女なら何か面白い本を知っているだろうか?
最初のコメントを投稿しよう!