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乾隊の射撃により、帝国軍兵の部隊は壊滅した。中には騎馬隊がいたが、ほとんど原型を留めていなかった。
中には自分の吹き飛ばされた片腕を探すように徘徊する帝国軍兵までいた。その様子に若林たち新人自衛官たちは目を背けたりしていた。
「隊長、こんなのって・・・」
実戦経験のある自衛官でもこの状況に目を背けた。ほとんどがバラバラの死体で、血の量があまりにもおびただしく、そこら中、血の海状態だ。
「これが戦争だ。ちょっと異常だけどな・・・」
乾はそう答えた。冷静すぎる口調に仲間の自衛官も寒気がした。
すると、乾は突然ガスマスクを外し、死にかけている帝国軍兵に近寄った。それはさっきの普通の帝国軍兵より立派な鎧を着ており、マントをしていた。顔には仮面のようなものをしている。
その仮面を外した。その素顔はかなり若かった。乾とほとんど変わらないぐらいの男の素顔が見えた。
「バ、バケモノが・・・」
その帝国軍兵が喋った。しかし、すぐに力尽きた。
乾はその男の首に指を当てた。
「まだ息がある・・・。気絶しただけか。衛生兵!」
「え?は、はい!」
衛生科の隊員はすぐに救急箱を持って走り寄ってきた。
「コイツを運び出せ。応急処置だ」
「ですが、コイツらは無抵抗の民間人を殺したのですよ!」
「情報が得られるはずだ。さっき一言を聞いたが、日本語は通じるらしい。すぐに救援のヘリをよこすように連絡をしてくれ」
「りょ、了解」
衛生科の自衛官はその帝国軍兵を二人で持ち上げ、運び始めた。
その様子を一部始終見ていた諏訪が乾に近づく。
「なぜ、ヤツを助けた?」
「魔法とかドラゴンとかが本当に実在したんだ。もしかしたら、向こうの世界にいくことになる可能性だってあるからな。それまでに情報は得ておいたほうがいいかなと思ってね」
「・・・お前はどうしてそんなに冷静になりきれる」
諏訪は何の迷いもなく聞いた。あまりの乾の冷静さに。
「わからない・・・。スターリングラードの時から俺はなぜかこんなに冷静になっている。どうかしているのかもしれないな」
「そうか。あれは悲惨だったしな」
「任務を続行するぞ。この惨劇を引き起こした犯人を殺さないとならないしな」
そう言うと、乾は再びマスクをし、歩き始めた。諏訪たちもそれに続いた。
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