異世界へ

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お台場事件の後、正式に総理大臣となったのは、大野啓次郎だった。 元海上自衛官であり、実戦経験を持つ。自衛隊時代の階級は一等海佐だったらしい。 「・・・それで、古賀さん。あなたはどう考えますか」 大野は会議室で、防衛大臣の古賀小五郎に聞いた。ちなみに彼は元陸上自衛隊のレンジャー隊員である。 「それはもう、異世界への派遣に決まっている。それが、私の考えだ。そうだろう?光本内務大臣」 古賀は横目で内務大臣の光本早苗内務大臣を見た。彼女は元航空自衛隊のパイロットである。 「私も古賀さんと同じ考えでございます。ですが、どのような理由で国民を納得させるかどうかでございますわ」 光本は静かな口調で言った。 「問題はそこだな。防衛省科学技術研究所で連中の持っていた槍や、ドラゴンの鱗、鎧などを解析した結果、この世界ではほとんど手に入れることはできないような金属を使っていることがわかった」 「それはつまり?」 大野が口を挟んだ。興味深そうな顔で古賀の顔を見ている。 「向こうの異世界では無限大の資源が眠っている可能性がある」 それを聞いた大臣たちは古賀を見た。 しかし、驚きの表情は見せなかった。まるでロボットのように。 「なるほど。その資源を我が日本で独占し、アジアにおける支配力を高めることができるな。それを理由に中国や朝鮮の奴らにも圧力をかけることができる」 大野は妙な笑みを浮かべながら言った。 「確かにそうですわね。北朝鮮は対馬事件以来、世界からの信用も失っていますし。現在は中国からの支援がなければ国としての機能が持たない様子ですから」 「10年代は中国マネーに頼りきっていたからな。東北大震災でも一応、そのおかげで日本経済はなんとか回復したがな」 「ま、とりあえず、これからのことを考えましょうや」 大野は二人の会話に割り込み、なんとかこれからのことを話し合いをしようとした。
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