まさかの王道

11/44
1221人が本棚に入れています
本棚に追加
/283ページ
そう…声を出すことが恐怖になってしまったんだ。 例え、いくら腹がすこうとも殴られようとも、背中を刃物で切られようとも… 俺は声を出すことをしなかったんだ。 未だに俺の背中には右肩から腰の尾てい骨まで痕が残っている。 瀕死の状態だった俺はなんとか姉に見つけてもらい助かったのだ。 その事件によって虐待は世間と警察にバレて両親は捕まった。 5歳の冬だった。 しばらく入院していた俺は、姉貴と兄貴のおかげでなんとか回復していき、だんだん親しい人限定で感情と声を出せるようになっていた。 ガチャン…! 気がつくと俺は屋上に来ていた。 俺はここが好きで、考え事をするたびにここに来ていた。 "嘘をつく"… 俺は一生この嘘を付き続けるだろう。 それがどんな嘘で、どんな得があるかなんて、俺にはどうでもいい。 ただ、嘘をつかせてほしいんだ。 自分を隠す嘘を…
/283ページ

最初のコメントを投稿しよう!