ピクニックin北国

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かつて澄んだ湖が多く点在していた南部や、緑豊かな森が広がっていた北部。 しかし今やその面影を見る事が出来る機会は少ない。 もちろんアーコロジーの代表格であり、多くの人が集まるフェンリルの本拠地や、その周辺に密接する外部居住区の近くでは殆どその存在を感じ取ることはできない。 かつて澄んだ湖があった場所は便利さを求めた結果埋め立てられ、緑豊かな森の代わりには無謀な拡大を試み、失敗に終わった外部居住区の骨組み鉄骨が散在している。 北の地は人が作り出した鉄骨がまるで人間を拒むように、冷えた肌を雨風に晒し錆び付かせながら大地にそびえ立ち、粉雪を踊らせる風が吹き抜ける度に何とも形容しがたい、悲しげな音を響かせている。 「ったく……恨むならアラガミを恨めよな」 嫌味ったらしく聞こえる風の哭き声に、責められているような気がしてならない。 いや、―――本当に責められているんだと思う。 周囲に甘えてばかりいた自分の幼さや、 あの人の最期に立ち会えなかった事や、 それら全部を引っくるめて、俺はこの地に嫌われている。たまに感じる居心地の悪さも、きっとそのせいだ。 俺が面倒くさがりつつも“この仕事”を続けているのは、償いや罪滅ぼしと同じ類いなのかもしれない。
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