ピクニックin北国

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その後もたいして重要な話もなく待機地点まで辿り着いたが開始時間よりだいぶ早い。 適当に腰を下ろし、暇潰しで缶コーヒー片手に新発売のレーションを食べ比べるのもいつも通りだ。 ……おい、レトルトパウチ一杯のサルミアッキとか開発者ふざけすぎだろ?一度に食いきれるかこんな量。せめてジッパー付きのレトルトパウチにしろよ。じゃないと持って帰れないだろ。 と、そんな感じで話している間にも周囲を見渡す。たとえミッション開始前でも、いつターゲット以外のアラガミが襲ってくるかわからない。 フェンリルから一歩でも出たら油断はしてはいけない。 それに最近はアラガミ以外でもカルトだかカルタだかの教団が活動を活発化させているようだから「知らない人にはついていくな」と隊長に言われてる。俺は子供かっつーの。 ……まぁその点、この待機場所は都合が良い。遮蔽物は少ないが、高台にあるこの場所は見晴らしが良い。だから待機場所なんだろうけど。 と言っても見えるものなんて雪に覆われた地面と瓦礫程度だし、遮蔽物が無いから風も吹き抜けていく。 「いやぁ…それにしてもここら辺もずいぶん変わったねぇ」 エステルの声に振り向く。 そのポーズ……ハタ・ヨーガとかどこで習ってきたよ?涼しげな顔で何やってんだお前?むしろ寒ぃぞ。 「知ってる?この辺りってほんの四、五年前まで国立公園だったんだよ。そこら辺に転がっているベンチの残骸もその名残」 「ほぅ……その頃はもうちっと南の国に居たのじゃが…そうじゃったのか」 さっきとは少し違った様子で辺りを見回すティオにつられ、俺も遠くに視線を投げる。……少し風が強くなった気がする。 「俺は……知ってたぞ」 二人の視線を背に受けながら時計を見る。 「ずいぶん……年季の入った時計だね?」 「ああ……それよりも時間だ」 振り返り二人の顔を見る。いつも通りの表情だ。 「いいか?雑魚が相手でも油断はすんなよ。あとは……」 「生き残るぞ、必ず」 「生き残るわい、必ず」 「生き残るよ、必ず」 綺麗に台詞が被ったところで「今日のお仕事」が始まった。
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