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縁側から庭に出て顔を上げると、限りなく黒に近い濃紺の空と、黄金色に輝く満月が目に入った。
雲一つない夜空に、凛と輝く月。
「鈴姫様、お風邪を召してしまいますよ」
言葉と同時に、ふわっと肩に淡い浅葱色の羽織がかけられる。
「青藍………」
振り向いた私ににっこりと笑うと、彼は同じように月を見上げる。
「綺麗な月ですね」
「ええ……」
ここ数日、天気が優れなかった京の都の空も、嘘のように晴れ渡っている。
だけど………。
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