六華舞い散る月夜の晩に

4/23
前へ
/58ページ
次へ
春には美しく綺麗な花を咲かせるけど、冬は枝のみになり寂しくなっている。 その大樹の根元、屋敷から見えない植え込みの陰に何かがある。 「……?」 不思議に思って、覗いてみると―― 「わ……」 そこにいたのは、美しい人だった。 雪原のように白銀に輝く長い髪に白い肌。 見たこともない装飾のある服を纏っている。 端正で整った顔に長い睫毛。 一見すると、中性的な顔立ちで男か女か分からない。 「あの~ もしもし……? 起きてくださ~い」 傍に行き、ゆさゆさと揺り起こそうとしてみても、なかなか目を覚まさない。 「雪も降ってきてますし……風邪を引いてしまいますよ?」
/58ページ

最初のコメントを投稿しよう!

105人が本棚に入れています
本棚に追加