六華舞い散る月夜の晩に

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刀で斬られたのであろう傷は深く、血は止まっていない。 離れようともがくのを無理矢理抑え、傷に手を翳す。 淡い桜色の光に包まれ、瞬く間に傷が跡形もなく消える。 「うわ……」 彼は驚きで金の瞳をぱちくりとして、傷のあったはずのところを何度も確かめる。 「お前、傷を治せるのか!?」 ついさっきまでの警戒の色は消え、無邪気そうに訊いてくる。 「はい。大抵の傷は治すことができますが……」 「珍しい異能だな。治してくれてありがとうな」 「いえ、怪我をしている方を放っておけないだけですので……」
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