105人が本棚に入れています
本棚に追加
刀で斬られたのであろう傷は深く、血は止まっていない。
離れようともがくのを無理矢理抑え、傷に手を翳す。
淡い桜色の光に包まれ、瞬く間に傷が跡形もなく消える。
「うわ……」
彼は驚きで金の瞳をぱちくりとして、傷のあったはずのところを何度も確かめる。
「お前、傷を治せるのか!?」
ついさっきまでの警戒の色は消え、無邪気そうに訊いてくる。
「はい。大抵の傷は治すことができますが……」
「珍しい異能だな。治してくれてありがとうな」
「いえ、怪我をしている方を放っておけないだけですので……」
最初のコメントを投稿しよう!