序章

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「……信長は、天下を取って、何を望んでいたと思う?」 「何が言いたいんだ……?」 秀吉は思わず睨む、しかし光秀は何の反応も見せず、話を続ける。 「日ノ本の平和、即ち天下泰平だ。素晴らしい事だ、この群雄割拠の時代、戦が起きれば血がその場一帯を染める。その時代の終止符を打つべく、あの男は争いの無い平和な日ノ本にするつもりだった。だがその夢物語も、俺が潰した」 握り拳を作りながら光秀はそう言った、 「夢物語だと……」 「そうだ。何が平和だ、何が天下泰平だ。人は欲の為に戦をし、己の野望を邪魔する者は全て消す、それが人であるゆえんだ!俺はその大うつけ者の夢物語を消したに過ぎない」 悠々と語る光秀に、堪らず秀吉は叫ぶ。 「信長様の夢を愚弄するな!信長様は言っていた!日ノ本の人間全てが争わずにする天下泰平の世にすると!それをお前は夢物語を言うのか!」 ふん、と秀吉の言葉を馬鹿にするように失笑して、 「あぁそうだ。俺にしてはとんだ夢物語だ。そんな浅はかな夢を掲げて、俺はあの男に尽くしてたと思えば、心底から失望する」 と、挑発ともとれる暴言を吐き出す。 無論その挑発に、秀吉は乗らないわけが無い。 「それ以上信長様の悪口を言うな!光秀!」
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