下校途中

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「寒っ…。」 当たり前だ。 雪が降ってるもの。 外に出てから後悔する。 せめてジャンパーだけは取れば良かった。 まあ、家近いし大丈夫だろう。 うん。頑張ろう。 そう思い歩きだす。 「先輩!!」 聞き覚えのある声。 吉野だ。 振り返らず歩く。 吉野は走ってこちらに向かって来た。 「何やってるんですか! ジャンパーも着ずに外に出たら、風邪引きますよ!」 息を切らしながら吉野は言った。 「ごめん……。ありがとう。」 吉野からジャンパーを貰う。 そしてきちんと着た。 暖かい。 「うん。本当にありがとう。じゃあ。」 早口で吉野に言い、走った。 ただ、走ったのがまずかった。 早歩きにすれば良かった。 雪が降ってるにも関わらず、走ったせいで転んだ。 いや、正確には転びそうになった。 吉野が私をキャッチしてくれたのだ。 「あ、ありがとう。」 吉野にお礼を言う。 目を合わせずに。 「雪道なのに、走ったら危ないですよ。」 吉野も私に目を合わせずに言った。 「ごめん。」 何だろう。 この空気は…。 空気を破ったのは、吉野だった。
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