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『柳屋』
私の家は代々受け継がれてる着物のお店。
創業60年ぐらい続いてる。
そして三代目になる予定の私、柳屋一花は…。
ただ今高熱にうなされています。
「八度九分。完全なる風邪ね。」
母は笑いながら、私に言った。
「唯一の自慢が~……。」
――風邪を引かない。
これが私の自慢だったのだ。
ここ2年引いていなかったのに……。
「仕方ないでしょう。
一花だって人間なんだから。」
母は苦笑いしながら言った。
「はあー。」
大きなため息とともに、体のあちこちが熱を帯びる。
本当に引いたんだな…。
かなり凹みます。
「一花。そろそろ母さん行くからね。」
母は立ち上がり出掛ける準備をしだした。
「ふぇ…?」
「昨日、言ったじゃない。
今日はいつも来てくれるお客様が、パーティー開くので行かなきゃ行けないって。」
「…………。」
「あら、言ってなかったっけ?」
「初耳でごさいますよ。母よ…。」
「あら、ごめんなさい。言ったつもりでいたわ。」
おい…。
そういう重要な事はきちんと言ってくれ…
「じゃあ…父は…」
出張中だった……!!
「と言う事で、お留守番よろしくね。」
満面の笑みだな。
これ、本当にお得意様の所のパーティーか?
まあ、そんな事考えられる程、私の脳みそは発達していない。
要するに意識がもうろうとして来ていると言いたいのだ。
「じゃあ…言ってくるね!
あ、そうだ!
後で…………君来るから心配しないでね。」
私の意識は母の言葉を聞く前にときれた。
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