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私の眠りを妨げたのは、チャイム音だった。
不安定な足どりで玄関まで行く。
意識がもうろうなりながらドアを開ける。
「よう!風邪引きさん!
看病しに来てやったぜ。」
私は呆然としていた。
目も覚めてしまった。
何たって
この男が来たからだ。
「お前かよ……。」
力が抜け、床に座り込む。
すかさず私を支えたこの男は、和菓子屋の息子、橘颯太。
私の家『柳屋』と手を組んでるお店。
こいつも三代目になる予定らしい。
和風と言う繋がりもあって10月のお月見や、4月の花見は良く一緒に店を出している。
母さんが言っていたあの…………君はこいつの事だったとは……。
「お前とは失礼だぞ。
せっかく来てやったのに。」
「………ごめんなさい。」
「それでよろしい。」
満足そうに颯太は笑う。
私は颯太には勝てないのだ。
一つ上だからとか、そういうのでは無いんだけど。
何故か勝てない。
時々それが悔しく思う時もある…。
颯太は私をひょいっと抱き上げた。
「え!?ちょっと……降ろして…。」
「ダーメ。」
「何が『ダーメ』だ!」
「こういう時は素直に抱かれてなさい。」
「………。」
颯太は
ずるいと思う。
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