時間のいたずら

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彼女はおどおどしている。 「あ、あの…。」 「ああ。大丈夫…。」 と言ってみたものの、力が全く入らない。 突然彼女は、静かに俺の前に手を差し出す。 え、何? この手は何? 俺が混乱していると、 「立て…ないんですよね? 掴まって下さい。」 と彼女が言った。 情けなさが倍増する。 女の子に言わせるとは、男失格かな。 そう思いつつも彼女の手を掴む。 「よいしょ!ありがとう。」 彼女にお礼を言う。 「い、いえ。」 照れたように笑う彼女。 この子、中学生かな。 でも、この時間に登校すると遅刻だ。 もしくは具合が悪くて遅刻したか。 もしくは… 「君、受験生?」 「は、はい!」 驚いた様に頷く。 やっぱり……。 俺はこの子まで巻き込んでしまったのか。 「もしかして緑が丘高校に受験する?」 「はい。」 俺と同じ受験会場だ!! 罪悪感だけが増してくる。 「ごめんね。俺のせいで遅刻させてしまって。 本当にすみませんでした。」 謝るだくでは許されるはずが無いことは知っている。 だけど俺は謝る事しか出来ない。 俺は深く頭を下げた。
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