27人が本棚に入れています
本棚に追加
「ご機嫌だな」
楽しそうにしている友人を見て、音哉も珍しく顔を綻ばせた。
「じゃあ……俺もやりますか」
(チャポン)
そして彼も釣糸を垂れた。
2人の太公望は、そのまましばらく、他に何をするでもなく、ただ、眼前の糸や浮きの動きに全神経を向け、あるいは、食らいついた獲物を逃さじと、全力でロッドを引き上げ、糸を巻き取り、そして確実に仕留めるのみだった。
そしていつしか正午を過ぎた。
「こんなところか」
弓弦は不意に竿を回収する。
彼の大きなクーラーボックスの中では、溢れそうなほどの魚が、今にも跳びだそうかというくらいに踊り狂っていた。
最初のコメントを投稿しよう!