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しかし、いくらなんでも、兄には今の状況が分かっている。
だから、美少年が窓の外を走っているのだ。
バカ彼氏をここに来させるためには、このくらいしか方法がなかった。
一方の音哉も姫羅への発言では、言葉を選ばされていた。
なにしろ、弓弦の存在を知るのは、音哉自身くらいだからだ。
彼は、それ故に、少し矛盾した説明を姫羅にせざるを得ない現実への歯痒い思いに苛まれていた。
それへの苛立ちが、不幸にも、彼女への凄絶な責めとなって表れようとしていた。
不条理な八つ当たりだとは、彼自身よく分かっているのに。
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