27人が本棚に入れています
本棚に追加
/259ページ
雪彦が言うと、タクシーは颯爽と走り出した。
「雪彦」
「どうした?」
「さっきは本当にごめん。何も考えてないのは、俺のほうだった」
「何、別に気にすることじゃない」
「ありがとう」
「こっちだって……。お前がいなかったら、音哉は許してくれなかったかもしれない」
「音哉ね………」
不意に弓弦の声が暗くなる。
「え?音哉がどうかしたのか?」
雪彦は心配になって尋ねる。
すると弓弦は「そう…」と呟き、そのまま続けた。
「実はね、私の存在は聖騎士全体を見ても、殆ど知られていない。知っているのは……それこそ、私の弟と……音哉だけだった。あとは響ぐらいだし、彼が私を知ったのは、お前を止めに行く前のことだったよ。……不思議だけど、妹だって、私のことは知りやしない」
最初のコメントを投稿しよう!