一章

5/68
前へ
/316ページ
次へ
「言詠様は、本当に………大人びていますね…。 すみません、私も…しっかりしなくては…」 咲君は私を離した。 と同時ぐらいに、手を私の頭にやる。 「あぁ……せっかくの髪が……乱れてしまいましたね……」 飛ばされたり、飛んだり、降りたりと飛び降りが激しかったためか、髪はひどいことになっているという。 「……直す…?」 いつも結うのは、咲君。 「……ん~、やりたいのはやまやまなのですが、疑われるでしょうから…… せめて、櫛だけでも抜きたいですね……」 と本格的に思案に暮れている。 「……大丈夫。………………咲君も、疑われないように……そろそろ戻ったほうがいい……」 「……ですね では、私から」 チュッ と音を立てそうな、キスを額にしてくれた。 「……私からの、おまなじないです。 ………また、明日。 おやすみなさいませ…」 と襖をそっと開け、そっと閉じ帰っていった。 「……おやすみなさい…」 少し額に手をあて、小さく呟いた。
/316ページ

最初のコメントを投稿しよう!

252人が本棚に入れています
本棚に追加