序章

2/4
前へ
/316ページ
次へ
それは、普通の家なのだろう。 その家の中の部屋に、小さな一人用丸テーブルと背もたれ付きの椅子がある。 その椅子に、少女が一人座って本を読んでいる。 少女の髪は漆黒。とても長いのだろう。後頭部で平安時代の女性のような髪型で結っているが、まだ腰まである。 瞳は漆黒。ただ、少しの間緑掛かったりするのは気のせいだろうか。 服は、ワンピース。色は水色をしている。違和感を感じるのは、複数のポケットが理由だろう。腰に約5つ。長い両袖に一つずつ。 「…人は、不思議…」 声は鳥のさえずりのように、澄んでいる。 声を掛けられたのは、男性。 漆黒の髪は、肩まである。 瞳は、深い蒼。 服は、燕尾服。手には白い手袋をはめている。一瞬で執事と分かる。 「不思議……ですか?」 「……そう、不思議。こんなにも声がしているのに…………気付かない………」 男は、さして驚かない。馬鹿にもしない。何故か… 世界は広いから。男はそれを知っていた。 「……そうですね。ですが、私にはもっと疑問に思う事があります」 少女は顔を上げて、お茶を注いでいる男をみた。
/316ページ

最初のコメントを投稿しよう!

252人が本棚に入れています
本棚に追加