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千春に連れられ、ようやく0組の教室を見つける事ができた。
「おかしいなあ。この廊下、5回は渡った気がするけど……」
今となっては、それが錯覚だったのか事実だったのかは、わからなくなってしまったが。
千春が0組の扉を静かに開く。
中いた数人の生徒が、こちらをじっと見ていた。
と、その時――
「うひょー!そこの可愛い彼女!!」
千春が早速女子生徒の元に詰め寄り、自己紹介をし始めた。
教室には既に10人程の生徒が居り、皆バラバラの席に座って、何らかの動きを見せていた。
俺が教室の中を見回していると、一人の少女と目が合った。
少女の髪は白く、目は赤い。肌は美白を通り越しており、悪い言い方になるが、不気味ささえ感じられた。
まるで、ホラー映画に出てくる幽霊のような――
いかんいかん、俺としたことが。
暫く少女を見つめていると、少女はサッと視線を逸らしてきた。
黒板の方に目をやると、白いチョークで座席の位置が記されていた。
俺の席は、一番外側の前から三番目。
隣の子は“浜名恵梨架”という名前らしい。
恵梨架はまだ来ていなかったが、俺の前の席には一人の少年が座っており、少年は頬杖をつきながら窓の外を見ていた。
“水森慧”君か。
「初めまして水森君。今日からよろしく」
俺が声をかけると、水森君が不満げにこちらを振り向いた。
「誰が水森君だ馬鹿」
「な――」
水森君の顔の左半分に、何か鋭いもので強引に引き裂かれたような痕が残っていた。
よく見るとスカートを履いているじゃないか……
「ご、ごめん水森さん……」
水森君改め水森さんは、何も言わずにまた窓の外に視線を移した。
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