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俺は自分の席に座り、もう一度教室の中を眺めてみた。
「そこの可愛い女の子!えーと、ひかるちゃんかな?」
「ひ……ひかり……」
千春が白い髪の少女に話しかけている。
彼女の名は“神楽坂光(カグラザカヒカリ)”というらしい。
「ご、ごめんね光ちゃん!わざとじゃないんだ……」
「い、いえ……」
光は、捨てられた子犬のようにビクビクしながら、辺りをキョロキョロと見回している。
そして、再び俺と目が合った。
今度は視線を逸らさず、ジッとこちらを見つめてきた。
その目はこう訴えてる。
助けてください――と。
彼女の目には涙が溜まり、今にも泣き出してしまいそうだった。
「はぁ……」
俺は仕方なく立ち上がり、千春の肩を叩く。
「おい千春、初日から女の子を泣かせたって称号が欲しいか?」
「おま、何を言って――」
千春が光の方を振り返ると同時に、光が教室から走り去っていってしまった。
「ちょ――ったく……」
俺と千春は、光の後を追いかけることにした。
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