1年0組

5/6
前へ
/19ページ
次へ
俺は自分の席に座り、もう一度教室の中を眺めてみた。 「そこの可愛い女の子!えーと、ひかるちゃんかな?」 「ひ……ひかり……」 千春が白い髪の少女に話しかけている。 彼女の名は“神楽坂光(カグラザカヒカリ)”というらしい。 「ご、ごめんね光ちゃん!わざとじゃないんだ……」 「い、いえ……」 光は、捨てられた子犬のようにビクビクしながら、辺りをキョロキョロと見回している。 そして、再び俺と目が合った。 今度は視線を逸らさず、ジッとこちらを見つめてきた。 その目はこう訴えてる。 助けてください――と。 彼女の目には涙が溜まり、今にも泣き出してしまいそうだった。 「はぁ……」 俺は仕方なく立ち上がり、千春の肩を叩く。 「おい千春、初日から女の子を泣かせたって称号が欲しいか?」 「おま、何を言って――」 千春が光の方を振り返ると同時に、光が教室から走り去っていってしまった。 「ちょ――ったく……」 俺と千春は、光の後を追いかけることにした。
/19ページ

最初のコメントを投稿しよう!

1人が本棚に入れています
本棚に追加