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人間を見ていると、とにかく虫酸が走る。こめかみがビリビリと痛み、全身の血液が溶岩のように熱くなる。
少女――――ブリッツは、こめかみの辺りを押さえながら、歩道橋をあとにした。
こんなに苦しむのも、こんなに痛いのも、全部人間のせいなのだ。
「いたぞっ!」
ブリッツの肩がピクリと動いた。
――警官だ。
「貴様、手配中の強盗だな! 子供だからといってこれ以上は放っておかないぞ!」
「ふん…………」
ブリッツは振り返ろうともせずに、歩道橋から飛び降りた。
道路にいきなり少女が落ちてきたから、きっと車に乗っていた人は驚いたことだろう。
しかし、そんなことブリッツには関係ない。
「ごめんなさーい」
バイクに乗っていた青年を殴り飛ばし、あろうことか、ブリッツはそれに跨がり、そのばから逃走した。
自分に、居場所はない。
ならば、どこにいたって同じはずだ。
それでもこうしてバイクを走らせている。
ということは、どこか、まだなにかを期待しているのだろうか。
そんなはずはない。自分にはもうなにもない。
なにも手に入らないと理解できている。
ブリッツはバイクを走らせる。
はやく、人のいない場所へ行かなければ…………。
ブリッツは行くあてもなく、ただひたすらにバイクを走らせた。
いつか救われると信じて――――
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