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口にしたら一生、この叔父に勝てない気がした。
そうかと言って嘘をつけば見抜かれる。
同じことだ。
「ハの字眉毛…分かりやすいなぁ、伊周は」
「!!」
からかわれたのと急接近されたのとで、俺の顔は赤くなったり青ざめたりと大忙し。
「あ…」
ふいにかすめた、一陣の風。
それで答えが出た。
…半年の間で香りが変わってる。
空と同じなんだ。
いつか本当に、遠くなる。
その時惨めになるのは嫌だから。
俺は敢えて、比喩に逃げた。
「あんたって、空に似てるよ…」
「うん?“今日のお召し物似合ってますね”って言いたいのか?」
勝手に訳すな、と内心ため息をつきたかったが、今は合わせるを得策とみた。
「…そうだな」
見慣れていた蒼の衣を、今日の風が撫ぜていく。
胸の奥が微かに痛むのは、やけに綺麗すぎて。
空に似ているからだ。
俺の好きな、京の―――…
[END]
→あとがき
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