7人が本棚に入れています
本棚に追加
久しぶりの京の空は高くて、たった半年の内に、すっかり遠くなった感じがした。
蒼い衣に白を纏った姿がやけに綺麗で。
誰かを強く、思い出させた。
俺、藤原 伊周(ふじわらの これちか)は若干15歳で太宰府長官を務めている。
若いのにいい役職に就いているのは、多大なコネと運、それからほんの少し実力があるから。
要は親の身分が高ければそれなりの地位につけるってこと。
…よっぽどの愚鈍じゃない限りは、な。
九州から帰省したばかりの俺を待ち受けていたのは。
南の院での弓争いだった。
「…まぁ、負けないけどね」
呟いて、矢を放つ。
一瞬の静寂。
その後、小気味のいい音が辺りに響き渡る。
「お見事!」
「さすがですなぁ」
皆の歓声を受け流して、俺は競っていた相手、源 二舟(みなもとの にふね)
に微笑み掛けた。
.
最初のコメントを投稿しよう!