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天気は晴天で、追い風。
父上の計らいで身分の低い道長が先に、その後伊周を射させると決めた。
弓の腕前はほぼ互角。
だけど、挑発されて浮き足立っていた俺は5対3と2本差を付けられてしまった。
悔しいけれど仕方がない。
「満足したか?あんたの方が上手い…俺の負けだよ」
俺は言い訳が嫌いだから潔く負けを認めた。
でも、周りは違っていた。
父上や、その他の取り巻きたちは皆、異口同音にこう言ったのだ。
「あと2回ほど勝負を延長なさいませ」
「まさか――…!」
呆れた。
ホントに下らない。
皆のあからさまな意図に気がついて、溜め息がこぼれる。
つまり、2回4本の勝負を加えることで、前に負けている2本を取り返す。
残りの2本で同点、もしくは道長を追い越させようとしているのだ。
「あんた、こんな馬鹿げた策に掛かる訳ない…だろ?」
語尾は震えて掠れたが、ほぼ確信していた。
しかし、俺の考えは容易くひっくり返された。
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