雪になった男

2/8
前へ
/51ページ
次へ
それは冬のとある町に差し掛かった雪の降る日だった。 まだ夕刻だったが、陽はすでに遠くの山に隠れ、町は影を落としていた。 舞い落ちる雪の中、黒いコートを纏った男が静かに佇んでいた。 コートの襟を立てて、寒さに身を窄めるように背を丸くしている。 なぜ彼に興味を惹かれたのか分からないが、おれは悴む指に白い息を吐きかけながら男を見ていた。
/51ページ

最初のコメントを投稿しよう!

1人が本棚に入れています
本棚に追加