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しかし雪は止むこともなく、男の黒いコートを白く染めていく。
なぜ、人は手にできないモノを欲しがるのだろうか。
それらも、自分も、何時かは跡形もなく消えてしまうのに……。
欲望とは掌に乗せて成就する。
限られているから尊い。限られているから愛しいのだ。
目の前で項垂れる男を見て、悲しみと悔恨が伝わって来そうだった。
それでもおれは、白い雪に埋もれていく男を見続けた。
それが定めでもあるかのように……。
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