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「任せろ!
どんな打球でも
捕ってやるから♪」
と言っていた場面と、チームメイトが病室から出ていくあの場面を、毎晩のように夢に見ては、うなされながら汗だくで飛び起き、寝ることすらもままならない。
罪の意識を独りで抱え、人間の心と生活を取り戻すまで、約2年の年月を要した。
それでも本来の明るい自分には程遠く、定時制の高校を卒業した時には22歳。
出来るだけ人と関わらないようにと選んだ、自動車部品の工場での流れ作業を、何の目的も持たず、ただ淡々とこなす日々も、もう6年目を迎えていた。
そこに、エースだったアイツからの電話だったのだ。
今さら自分に何の用が…
せっかく忘れかけていたのに…
やっと立ち直ったのに…
その後、何度も着信はあったが、アイツからの電話に出ることはなかった。
ただただ、アイツが諦めてくれるのを祈ってばかりいた。
やっとアイツからの着信も無くなったある日…
定時に仕事を終え、会社から駅に向かい歩いていると、俺の少し前で停まった車から3人の男が降りてきた。
『こんな形は取りたくなかった。
けど、抵抗するなよ!』
そう言い放ったのはアイツで
あとの2人は、俺と交錯したあのレフトと、キャッチャーを守っていたキャプテンだった。
俺は3人に羽交い締めにされ、車に押し込まれた。
そのまま車を走らせるアイツ。
後部座席で俺を挟むように座る2人。
街の灯りがスローモーションに流れるような無言の車内で、俺はこの先に起こる全てのことを観念した。
とうとうあの時の
仕返しをされるのか…
でもどうされても
文句は言えない。
コイツ等の好きにさせよう。
そう考えると、何故かスッキリした気分になった。
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