1人が本棚に入れています
本棚に追加
忘れもしない10年前の夏。
茹だるような暑さの中、俺達は甲子園行きを賭けた最後の闘いに挑んでいた。
その日は多くの予想を覆し、準決勝まで打ち勝ってきた両チームの闘いとは思えないような投手戦。
スコアボードには0が並ぶ。
「気楽にいこうぜ!
任せろ!
どんな打球でも
捕ってやるから♪」
9回裏2アウト。
ランナー2塁。
2ストライク0ボールから突然制球が乱れ、カウント2&3になった所で駆け寄った俺達に、アイツはエースらしくしっかりと頷いた。
このバッターを抑えれば、次の攻撃はトップの俺から。
惜しくも得点には至らなかったが、今日の俺は3打数2安打と当たっている。
なんとかこの回を凌いで、俺がチャンスを創るんだ。
ショートのポジションに戻り、満身創痍のエースを勇気づけるように精一杯の声を出した。
「ど真ん中でいいぞ!!
バッターガチガチや!!」
他のナインも続く。
スタンドも一段と盛り上がる。
アイツはセットポジションから2塁ランナーを目で牽制し、目一杯のストレートをミット目掛けて投げ込んだ。
キーン
バットの根元を霞めたボールは、俺の後方にフラフラッと舞い上がった。
懸命にボールを追う。
これさえ捕れば…
「任せろ!
どんな打球でも
捕ってやるから♪」
その自分の言葉を信じて投げたアイツの為にも、必死にボールに食らい付いた…
最初のコメントを投稿しよう!