回想 ― 試合の記憶 ―

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忘れもしない10年前の夏。 茹だるような暑さの中、俺達は甲子園行きを賭けた最後の闘いに挑んでいた。 その日は多くの予想を覆し、準決勝まで打ち勝ってきた両チームの闘いとは思えないような投手戦。 スコアボードには0が並ぶ。 「気楽にいこうぜ!  任せろ!  どんな打球でも  捕ってやるから♪」 9回裏2アウト。 ランナー2塁。 2ストライク0ボールから突然制球が乱れ、カウント2&3になった所で駆け寄った俺達に、アイツはエースらしくしっかりと頷いた。 このバッターを抑えれば、次の攻撃はトップの俺から。 惜しくも得点には至らなかったが、今日の俺は3打数2安打と当たっている。 なんとかこの回を凌いで、俺がチャンスを創るんだ。 ショートのポジションに戻り、満身創痍のエースを勇気づけるように精一杯の声を出した。 「ど真ん中でいいぞ!!  バッターガチガチや!!」 他のナインも続く。 スタンドも一段と盛り上がる。 アイツはセットポジションから2塁ランナーを目で牽制し、目一杯のストレートをミット目掛けて投げ込んだ。 キーン バットの根元を霞めたボールは、俺の後方にフラフラッと舞い上がった。 懸命にボールを追う。 これさえ捕れば… 「任せろ!  どんな打球でも  捕ってやるから♪」 その自分の言葉を信じて投げたアイツの為にも、必死にボールに食らい付いた…
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