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…・…・…・…・…・…・…
キーン
バットの根元を霞めたボールは、俺の後方にフラフラッと舞い上がった。
懸命にボールを追う。
これさえ捕れば…
「任せろ!
どんな打球でも
捕ってやるから♪」
その自分の言葉を信じて投げたアイツの為にも、必死にボールに食らい付いた…
…・…・…・…・…・…・…
この先の出来事を知ったのは、もう試合から数週間は経った後。
意識回復後、ICUから一般病棟の個室に移ってからのことだった。
見舞いに来てくれた監督とチームメイトに、まだ声を出して喋れない俺は、ただ笑顔を振りまくことしか出来ずにいた。
誰も多くは語らない。
静まった空気のまま
『長居しても疲れるだろうし、そろそろお暇するか。』
監督がそう呟くと、皆、ぞろぞろと部屋を出た。
去り際、チームメイトが誰も俺と目も合わさず部屋を出ていった。
折れた肋骨が肺に刺さり、かなりの重症を負っていた俺を見るに堪えなかったのか…
でもその行動の、本当の意味を理解するのは、見舞品の中にあった1本のビデオテープを見てからだった。
〔2000年 夏 地区予選 決勝〕
そうラベリングされたテープを早く見たい一心で、看護師さんに無理を言ってデッキをセッティングしてもらう。
ベッドを少し起こし、独りの病室でそれを見た俺は愕然とした。
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