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「ふふっ ほんっと…
気づくの遅いよ」
歪んだ笑みを作り、笑う彼に背筋がゾクリとした。
「ふふっ そう…
僕は野崎 斎。梓と双子のね」
「そ、そんなっ だってあの日!!」
今井の瞳が恐怖に見開く
「あの日ね…
鬼になった僕に梓は寮に帰るって言ったよ。だけど、風邪をひいてた僕に気を遣って… あの日、鬼を代わってくれたんだ。
"面倒くせぇけど、俺はお前の兄だろ?俺の心配よりも、おめぇは早く帰れ病人。んで、大人しく寮で寝てろ"
って。あの日そう言って… 梓が代わってくれたよ。だけど、鬼の交代は認められない。だから――… 鬼ごっこが終わるまで寮でも学園でも、僕はずっと… 梓を演じてた。
そしたら――…
梓は帰って来なくて、再会したのが… 斎として棺に入った梓だった…」
・
悲しげに目を伏せ、斎は顔を上げた。
「…確信はなかったよ。だけど、前々から僕を快く思ってなかった君が、
梓とは気づかず、殺したんじゃないかと思った…
だから、殺したよ。
たとえ、違ってても…
梓が死んだ今じゃ、どーでもよく思ったから…」
ガチャ、
斎の手に手錠が嵌められる――
無論、梓を突き落としたと自白した今井もだが――… 今井は狂ったように"俺じゃない俺じゃない"ひたすら呟いていた。
「いっちゃん…」
「――…っ 兄さん」
「にいちゃ…っ!」
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