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真新しい学ランに身を包み、弾む気持ちを抑えきれずに迎えた中学校の入学式。
校門で初めて見た君に、他の何も目に入らないくらいに心臓のど真ん中を撃ち抜かれた。
君と同じクラスだと知った時、ただそれだけで勝手に運命だと信じた俺。
子供だったなぁ…
『おはよう』を交わすだけで嬉しくて
授業中、ふと目が合うだけで照れくさくて
体育祭なんか、君にカッコいい所を見せたい一心で頑張れて
幼かった俺は、君と普通に会話するだけで幸せだった。
でも、俺にとっては特別な存在の君だったけど、君にとって俺は只の親しいクラスメイトで…
君から初めてされたお願いは、『好き』って気持ちを伝えることから逃げていた意気地無しの俺への、神様の酷な悪戯のように思えた。
『私、あの人が好きなの』
「え?」
『小学校からの親友なんだよね?』
「あ… うん」
『紹介してくれないかな?』
そう言いながら、はにかむ君の笑顔が眩しくて…
それがやけに悔しくて、悲しくて、自分が情けなくて…
込み上げる涙を抑えながら、頷くことしか出来なかった。
正直、応援する気にはなれなかったけど、君にもアイツにも自分の気持ちを伝えずに逢わせたのが、俺の精一杯のフェアプレーだったんだ。
でも、そう望んだはずなのに、アイツにフラれて泣きじゃくってる君を見ると、自分のせいのように思えて
慰めることも狡い気がして
君を抱きしめる勇気も無くて。
こんなことで君と疎遠になるって知ってたら、最初から出逢わなければ良かったのに…
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