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「澄川さん?」
「…はい。」
てっきり管理人を高齢の男性だと思っていたので、少し戸惑った表情をしたのだろう。
彼が微笑んだ。
「今、じいちゃんは、自治会の集まりに行ってますから。」
朝日が差し込んだのか、彼が目を細めた。
「何時まで、停められますか?」
「できれば、時間ぎりぎりまでお願いしたいのですが、」
「んー、一応、20時にロープ張ることにしているんですけど、」
彼は、左手の人差し指を唇にあて、いたずらっ子のような笑みを浮かべた。
「じいちゃんから聞いてます。澄川さんって、その坂の上の澄川さんでしょう。」
息を呑んだ私に、彼は続けた。
「昔、お世話になったから、何時まででもいいそうです。」
私の背後に、冬の太陽が昇る。
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