一通の手紙・・・

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その日、前田はサドと優子が入院している病院に居た。 「意識が戻る見込はないって・・・あのヤブ医者・・・ふざけんじゃねえってんだよ。」 不安そうな顔で無理に笑いながらサドは言った。 無言の前田。 「卒業式は優子さんと出るんだ・・・優子さんなら絶対目を覚ますはずだ。」 溢れそうな涙を我慢しながら話すサドを前田は見つめていた。 「サドさん・・・。」 「卒業式の朝になったら、ケロッと起きて『何してんだ!早く学校行くぞ!』って・・・それが優子さんなんだ。」 サドの優子に対する思いが前田にひしひしと伝わる。 マブダチ以上の関係だと思った。 そんな関係が前田には羨ましく思える。 かつて、夢を語り合ったマブダチ・・・みなみ。 みなみが居なくなってから前田にその関係は無くなっていた。 微笑むサド。 「前田・・・卒業式で会おうぜ。」 その言葉を聞き、前田は病院を後にした。 冷たい病院の廊下・・・。 何も視界に入らなかった。 残るのはすべて病院の消毒用アルコールの臭いと、病院の冷たさだけ・・・。 そう、あの時も同じだった。
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