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俯いて、唇を噛む。
お願いだから涙よ出ないでください。
携帯を渡されて受け取った時、急に手首を掴まれて、ペットボトルが落ちた。
「行くぞ」
声とともに、凄い力で引っ張られる。
「ちょ、ちょっと・・・」
「おい、栗原!!」
引っ張られるまま、走る。
何がなんだか分からない。
やっと止まったときには、二人とも息があがっていた。
「久しぶりに走った」
ゲホゲホと咳き込みながら、くりちゃんが座り込む。
「くりちゃんどうしたの?」
なんでこんな事をしたのだろう。
どうしても聞きたかった。
「光輝先輩に泣かされたら、俺が嫌だったから」
私の事?
呼吸を整えて、くりちゃんが再び口を開いた。
「あのままだと、ゆめちゃんが泣くんじゃないかと思ったんだよね。
先輩、キレるとやばいでしょ」
くりちゃんは私が泣きそうなのが分かったんだ。
「光輝先輩、中学ん時有名だったの知ってる?」
くりちゃんが言った。
先輩は有名人だったんだ。
初めて知った。
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