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「戻るか?」
「まだここに居たい」
「風、気持ち良いもんな」
それから、言葉も無い時間を二人で過ごした。
静かで、風に吹かれて、何も考えないでいい時間。
「何してんすか?」
高村先輩の声で現実に戻る。
「ここ、すげえ気持良い」
先生がそう答えた。
「部屋、凄い微妙な雰囲気になってるから、戻って来てくださいよ」
「マジで~、まだここに居たいんだけど」
「無理です!!」
先生はブツブツ言いながら立ち上がった。
目の前に出された先生の手を握ると、立たせてくれた。
そのまま強く握られ、手を繋いだまま部屋に戻る。
先生の大きな手は、とても温かくて、心臓の音が伝わらないかドキドキしていた。
部屋に入っても、先生は手を離してくれず、隣に座らされた。
先輩も座る。
「裕太、戻って来たぞ」
そう言うと、隣の部屋から和美が走って抱き付いてきた。
ゴン!!
私は畳に頭を打ち付ける。
「痛い・・・」
一瞬、頭の中が真っ白になった。
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