家族

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ちゃんと寝てるか見えるように、襖は開けたまま。 もう週末になってしまう。 午後から病院も待っているし、和美も居ない。 お風呂にも入れない。 大きなため息を吐いた。 「バーカ、バーカ」 誰でもない、自分に言った。 先生と先輩が自分のことに夢中になっているのを確認すると、静かに障子と窓を開けて、外を見る。 夏の匂い。 せみが鳴いている。 風が吹いて髪を揺らすと、心が和む。 綺麗な青空に白い雲。 癒される。 「おい、こら!」 先生の声がして、急いで戸締りをして布団に入る。 「ひーまーだーよー」 音程をつけて言う。 「うるさい!!」 先生に怒られて大人しくなる。 障子の隙間から見える空。 雲の流れを見ていることにした。 ゆっくり形を変える雲。 時間がゆっくり過ぎている証拠。 静かに目を閉じる。 先生と会えなくなるのは嫌だけど、このままじゃ駄目だ。 明日は絶対に帰ろう!
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