家族

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ベンチに座り、気の済むまで泣かせてあげた。 和美の手を握ってあげていた。 「ゆめ・・私、もう・・嫌になった・・・」 和美が小さな声で言った。 握り締める手に力を込める。 「うん」 「私が居なくなったら、泣いてくれる人居ると思う?」 「うん。 赤塚先輩が心配だね。 大好きな人が居なくなるんだもん」 「・・・うん」 私も慌てないで、和美のしゃべるペースに合わせて話す。 「高村先輩だって泣いちゃうよ、きっと。 友達も沢山居るでしょ?」 「・・・ゆめは? 泣いてくれないの?」 和美が私を見る。 「泣かないよ」 「なんで?」 和美の目が潤む。 「人の心は変わりやすいって言うじゃん。 今が私にとっての、一番幸せな時間だと思うんだ」 「・・・」 「私が今、失くしたくないのは和美だから、私もついていく。 一人になりたくない」 「ゆめ・・・」 「先輩も先生も、私から離れていくかもしいれないし、私が居なくなって悲しむ人なんて、ほんの数人だもん。 天国には、お母さんもお父さんも、高村先輩の妹も居る。 私の居場所がある。 和美が天国で一人にならないように、私もついていくよ」 そう言って、和美の肩に頭を置いた。
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