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「とりあえず、話ししよう」
翔さんの声。
怒った感じはない。
それより、焦っているのかもしれない。
表情を見ていないから、分からないけど。
「今の私に、とりあえずという言葉はありません」
谷さんのことを悪くいうことはできない。
後が怖いから。
「翔さん・・・何したんですか?
こいつがこんな風になるの、おかしいって」
先輩が言った。
「・・・何って・・・」
翔さんが言った。
「こいつが、翔さんって呼んでるんですよ?
親近感が全く感じられない」
「な、夢叶・・・」
翔さんが何かを言いかけた時、車のクラクションが鳴った。
私はその主を確かめる。
背筋が凍るような錯覚を覚える。
あの目で見られている。
谷さんの目が、私を捕らえていた。
動けない。
蛇に睨まれた蛙のよう。
声すら出せなくなった。
全身が恐怖という名の渦で埋めつくされた。
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