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ゆっくりと車から降りて来る谷さん。 「自分の状況をわきまえて行動したらどうだ」 谷さんが、そう言いながら近づいてくる。 そして、再び谷さんの視線が私に向けられた。 体がビクつく。 「言った意味、分かってないみたいだけど、もう一回言おうか? 二人でゆっくり話し、する?」 顔は笑っているけど、目が笑ってない。 嫌だ!そう言って首を振り、おもいきり拒否したかった。 だけど、どっちも出来ない。 手が小刻みに震えだす。 それに気付いたのか、翔さんが私の名前を呼んだ。 固まった体。 視線すら、谷さんから離せない。 すると、翔さんの握っている逆の手を握られ、引っ張られるまま家の中に入らされる。 奈美さんだった。 「これ以上夢叶ちゃんをいじめたら、私が許さない! 明日のライブは行かないし、優待なんてされたくもない! 早く帰れ、消えろ!!」 奈美さんが怒鳴って、家の戸を勢い良く閉めた。 私は恐怖から救われたんだ。 固まった体が、一気に緩んでいく。 足の力も抜け、その場に座りこんだ。 「わ、大丈夫!?」 優子さんがびっくりして、声を出した。 「大丈夫・・・安心したら、力抜けた・・・」 奈美さんと優子さんに笑顔で答えた。
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