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ここで座りこんでいる暇はない。 急いで先輩を起こす手伝いをする。 次は・・・谷さん。 だけど、無理。 触れたくない。 先輩は、そんな私を察知したのか、谷さんに肩を貸して起こした。 「・・・もう、喧嘩はしない。 そう約束して!!」 翔さんに言った。 「・・・もう・・・」 「え?」 翔さんが何かを言った。 だけど、消えそうな、弱弱しい声で聞こえなかった。 私は近づいた。 「なに?」 「・・・もう、よそよそしい呼び方すんなよ・・・」 先生の弱弱しい声。 私にしか聞こえないくらいの、小さな声。 悲しそうな表情をしていて、見ている私まで泣きそうになる。 胸が締め付けられるほど切なくなった。 「・・・分かった。 だから約束して。 もう喧嘩はしないって」 「・・・ああ」 「それと、二人に謝って。 怪我させたのは事実でしょ?」 私は軽く睨んでみせた。 少しの沈黙。 そして、 「悪かった・・・」 と、翔さん・・・いや、先生が言った。 「よろしい!」 私は背伸びをして、先生の頭を撫でた。
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